クールな公爵様のゆゆしき恋情
フェルザー公爵
二人は大急ぎで来たようです。
アンネはぜいぜいと苦しそうな呼吸の合間に言いました。
「お嬢様、大変です!」
のんびりした性格のアンネがこんなに慌てるなんて、とても珍しい事です。
「何が有ったのですか?」
「フェルザー公爵がこの城へ来るそうです」
「……それは以前から聞いていますよ。アンネも知ってるでしょう?」
一緒に歓迎の準備をしているのですから。
でも私の言葉にアンネは首を左右に大きく振りました。
「そうではなくて、明日来るんですよ!」
「え?……明日って……どういう事ですか?」
要領を得ないアンネから、後ろで控えていたクレメンスに視線を移しました。
クレメンスは説明を求める私の視線に気付いてくれた様で、直ぐに冷静に報告をしてくれました。
「先程フェルザー公爵の使者が参りました。公爵は明日にはアンテス城に着くので、ラウラ様へ即時の面会を希望するとの事です」
アンネでは有りませんが、これには私も驚いて直ぐには声が出て来ませんでした。
だって、明日ですよ?
いくらなんでも知らせが突然過ぎると思います。
お城にお客様をお迎えする準備は進めていて、完璧に近いところまで整えましたが、私の心の準備はまだ当分終りません。
そんな中、お父様とお兄様が居ない場で、初対面の公爵様に会う事になるなんて。動揺を隠せません。