クールな公爵様のゆゆしき恋情
「レオンに話は聞いているな?」

アレクセイ様が少し目を細めて、挑むように私を見ています。私の動向を見逃さないとでも言う様に、隙の無い眼差しです。

「……」

アレクセイ様が婚約の事をおっしゃっている事は分かりますが、何と返事をすれば良いのか困ってしまいます。

「随分と嫌そうな顔だな」

アレクセイ様がまた皮肉な笑い顔になりました。私は慌てて弁解します。

「申し訳御座いません。そんなつもりでは無いのですが、あまりに思いがけない事で……上手く言葉が出て来ずにご無礼を致しました」

深く頭を下げて謝罪しますが、アレクセイ様の機嫌が直る事は有りませんでした。

「お前がどう思っていようが、この婚約はもう決まった事だから諦めるんだな」

そう語るアレクセイ様のお顔こそ、この婚約が嫌で仕方無いといった様に歪んでいます。

その姿を見て強く感じました。

このままでは絶対に良くありません。
これでは以前と同じ事の繰り返しでは有りませんか。

仕方無いと諦めて結婚してしまったら私もアレクセイ様も幸せにはなれません。お互い不幸になるだけなのです。

私は勇気を振り絞りアレクセイ様に告げました。
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