クールな公爵様のゆゆしき恋情
「まずは北の広場へ行く」
「北の広場ですか?」
私は内心首を傾げました。北の広場にはこれといって目を惹くものは無かったはずですから、わざわざ何をしに行くのかと不思議だったのです。
アレクセイ様は広場の方向に向かって歩きながら言いました。
「北の広場には屋台が出ているそうだ」
私もアレクセイ様の後を追いながら答えます。
「屋台ですか。それは私も知りませんでした」
「屋台が出る様になったのはここ1年の事だそうだから、王都にいたラウラが知らなくても不思議じゃないな。屋台には北の港から運ばれて来る海の幸の料理が豊富に有るらしい」
「そうなのですか」
それにしてもアレクセイ様は、どこでそんな情報を仕入れたのでしょうか。
私より今のアトレゼに詳しい様な気がします。案内は必要無かったのではないでしょうか。
「領民にもかなりの人気で、段々と屋台が増え規模が大きくなっているそうだ。今ではアンテスの特産品を使った料理が食べられる事で名所になっているらしいぞ。特に魚料理が人気らしい」
気のせいかもしれませんが、話をするアレクセイ様はとても楽しそうに見えます。
それ程屋台の魚料理が楽しみなのでしょうか。海の無い王都では鮮度の良い魚を食べられる機会が少ないからでしょうか?
アレクセイ様の身分ならいくらでも取り寄せられる様な気もしますが。
「ラウラの好きな白身の魚も食べられるそうだぞ」
「……」
「どうした?」
「いえ、何でもありません」
ただ、驚いてしまったのです。
アレクセイ様が、私の好きな食べ物を覚えていた事に。
アンテス育ちの私は、北の海で獲れる白身の魚が幼い頃から大好きです。
まだ、仲が良かった頃、私はアレクセイ様にその事を話した事がありました……子供の頃の記憶が思い浮かびます。
王都のお母様の生家の庭で。
私はいつもの様にアレクセイ様と二人でのんびりと過ごしていました。
お昼の食事を頂きお腹が膨れた後だったのですが、その時、なぜか急にアンテスの魚料理が食べたくなり、アレクセイ様に言ったのです。
『アレク様、アンテスにはとても美味しい白いお魚が有るの。今度アレク様と一緒に食べたいです』
『魚かあ……俺は肉の方が好きなんだよな』
満腹な為か、太い木の幹にもたれかかっていたアレクセイ様は気が乗らない様子でしたが、私は強引にお願いをしました。アレクセイ様と一緒に美味しいものを食べたいと思ったのです。
『アンテスのお魚はお肉にも負けないくらい美味しいんです。だからアレク様も一緒に食べましょうね、私、アレクセイ様にも美味しい魚を食べて欲しいんです』
『うーん、ラウラがそんなに言うなら仕方ないか。よし、じゃあ約束だ!』
アレクセイ様は笑顔で指切りをしてくれました。
結局、その約束は果たされる事はありませんでしたけれど。
アレクセイが初めてアンテスにいらっしゃった四年前の初夏には、理由は覚えていないのですが、魚料理のお店に行くことが出来ませんでした。
アレクセイ様の婚約者として王都で過ごしていた頃には、幼い頃の思い出話昔などした事がありませんでした。
冷たくなってしまったアレクセイ様に、幼い頃の約束の事など、言い出すことが出来なかったのです。
「北の広場ですか?」
私は内心首を傾げました。北の広場にはこれといって目を惹くものは無かったはずですから、わざわざ何をしに行くのかと不思議だったのです。
アレクセイ様は広場の方向に向かって歩きながら言いました。
「北の広場には屋台が出ているそうだ」
私もアレクセイ様の後を追いながら答えます。
「屋台ですか。それは私も知りませんでした」
「屋台が出る様になったのはここ1年の事だそうだから、王都にいたラウラが知らなくても不思議じゃないな。屋台には北の港から運ばれて来る海の幸の料理が豊富に有るらしい」
「そうなのですか」
それにしてもアレクセイ様は、どこでそんな情報を仕入れたのでしょうか。
私より今のアトレゼに詳しい様な気がします。案内は必要無かったのではないでしょうか。
「領民にもかなりの人気で、段々と屋台が増え規模が大きくなっているそうだ。今ではアンテスの特産品を使った料理が食べられる事で名所になっているらしいぞ。特に魚料理が人気らしい」
気のせいかもしれませんが、話をするアレクセイ様はとても楽しそうに見えます。
それ程屋台の魚料理が楽しみなのでしょうか。海の無い王都では鮮度の良い魚を食べられる機会が少ないからでしょうか?
アレクセイ様の身分ならいくらでも取り寄せられる様な気もしますが。
「ラウラの好きな白身の魚も食べられるそうだぞ」
「……」
「どうした?」
「いえ、何でもありません」
ただ、驚いてしまったのです。
アレクセイ様が、私の好きな食べ物を覚えていた事に。
アンテス育ちの私は、北の海で獲れる白身の魚が幼い頃から大好きです。
まだ、仲が良かった頃、私はアレクセイ様にその事を話した事がありました……子供の頃の記憶が思い浮かびます。
王都のお母様の生家の庭で。
私はいつもの様にアレクセイ様と二人でのんびりと過ごしていました。
お昼の食事を頂きお腹が膨れた後だったのですが、その時、なぜか急にアンテスの魚料理が食べたくなり、アレクセイ様に言ったのです。
『アレク様、アンテスにはとても美味しい白いお魚が有るの。今度アレク様と一緒に食べたいです』
『魚かあ……俺は肉の方が好きなんだよな』
満腹な為か、太い木の幹にもたれかかっていたアレクセイ様は気が乗らない様子でしたが、私は強引にお願いをしました。アレクセイ様と一緒に美味しいものを食べたいと思ったのです。
『アンテスのお魚はお肉にも負けないくらい美味しいんです。だからアレク様も一緒に食べましょうね、私、アレクセイ様にも美味しい魚を食べて欲しいんです』
『うーん、ラウラがそんなに言うなら仕方ないか。よし、じゃあ約束だ!』
アレクセイ様は笑顔で指切りをしてくれました。
結局、その約束は果たされる事はありませんでしたけれど。
アレクセイが初めてアンテスにいらっしゃった四年前の初夏には、理由は覚えていないのですが、魚料理のお店に行くことが出来ませんでした。
アレクセイ様の婚約者として王都で過ごしていた頃には、幼い頃の思い出話昔などした事がありませんでした。
冷たくなってしまったアレクセイ様に、幼い頃の約束の事など、言い出すことが出来なかったのです。