クールな公爵様のゆゆしき恋情
「がっかりって訳じゃないが、ラウラはなぜ変わったのかと考えていたんだ」

「変わった? 今の事ですか?」

「そうじゃない、もっと前からだろ?」

「……そうでしょうか、自分では良く分かりません」

アレクセイ様の言葉に、私はとても驚いてしまいました。

いつと比べてられているのかは分かりませんが、私はあまり自分自身が変わった自覚が有りません。

アレクセイ様の方こそ変わってしまったと、ずっと思っていました。

「私のどこが変わったと思うのですか?」

「笑わなくなったところ、感情を見せなくなったところ」

「私は、普通に笑いますが」

私だって楽しい事や嬉しい事があれば笑います。

「俺の前では笑わないようにしているだろ? 気付いてないのか?」

アレクセイ様の深い青の瞳に見つめられた私は、居た堪れなさでいっぱいになりました。

「……そんなつもりはありませんでした」

小さな声で答えましたが、心当たりは有りました。

王都に居た頃の私は、アレクセイ様の前では常に強い緊張を感じていました。

また何か傷つく事を言われるのではないかと、身構えてしまっていたのです。

アレクセイ様は私には冷たい言葉をかけながら、他の令嬢に対しては、美しさを褒め讃え、紳士的に優しく接していました。

その度に私は嫉妬で苦しくなり、泣きそうな気持ちになっていました。笑える訳がありませんでした。

それでも私はアレクセイ様と距離を置くことが、なかなか出来ませんでした。

アレクセイ様が好きで、辛くても会いたかったのです。
けれど、傷付きすぎたせいでしょうか。
私はいつの頃からか、アレクセイ様の前では少しも笑えなくなっていたのです。


ですがだんだんと、苦しい気持ちを乗り越えて来ていると感じます。

二人での外出などどうなるかと心配でしたが、今こうしてアレクセイ様と向き合っていても、戸惑いはしますが、不安や緊張や辛さは以前ほど感じていないのですから。

いろいろと有りましたけど、アレクセイ様とは、近隣友好領主の家族としてなら、この先も顔を合わせる事が出来そうな気がします。

爽やかな青空の下でアレクセイ様と向き合いながら、そんな事を考えていました。
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