クールな公爵様のゆゆしき恋情
女性は私より少し年上に見えました。街の女性によく見かける、ブラウスに長いスカート姿です。その周りを大柄で強面の男性三人が囲っていました。
見るからにとても良くない雰囲気です。
思わず立ち止まった私に、先を歩いていたアレクセイ様が気付き振り返りました。
「どうした?」
そう言いながら私の視線を追ったアレクセイ様も危機的状況の女性に気づいた様で、眉をひそめました。アレクセイ様もこの脇道の先が物騒だと分かっている様です。
私はキョロキョロと周囲を見回しました。近くに見回りの騎士が居れば助けて貰おうと思ったのです。
ですが運悪く女性を助けられそうな騎士はおろか、私とアレクセイ様以外の通行人も見当たりません。
どうすればいいのでしょうか。このままではあの女性は危険です。
抵抗している様ですが、強引に腕を掴まれてしまいました。このままでは連れ去れてしまうでしょう。
気づいてしまった以上、見過ごすことは出来ません。なんとかして助けなくては。
と、言ってもあの大柄で力の強そうな男性達を私が止める事は不可能です。辺境伯の娘だと身分を告げた所で、変装をしている上に、供も連れていないこの状況では信じては貰えないでしょう。それ以前に彼等には貴族の権力など通用しない様な気がします。
それならば。
「アレクセイ様、私は助けを呼んで来ます」
高級店の並ぶアトレゼ通りには警備の兵士が常駐しているはずです。事情を話て助けて貰おうと思いました。
間に合うか分かりませんが、それしか方法が無いと思ったのです。
ですが駆け出そうとした私をアレクセイ様が引き止めました。
「ラウラ、待つんだ」
「アレクセイ様? 離してください。時間が有りません」
焦る私を抑えてアレクセイ様は言いました。