クールな公爵様のゆゆしき恋情
この状況、どうすれば良いのでしょうか。

危険な状態の女性を助け出せたのは良かったのですが、代わりに私達が危険な状況に陥ってしまいました。

このままではアレクセイ様が危険です。

アレクセイ様の身にもしもの事が起きたら、大変な事になります。
お父様はアンテス辺境伯家の当主として、領内で起きた事への責任をとらなくてはならないでしょう。

ここは、アレクセイ様には、何としても逃げて頂かなくてはなりません。

それに元々こんな事になってしまったのは、私が女性を見つけ、助けたいと思ったからなのです。
私がアレクセイ様を巻き込んでしまったのです。

ここは私がなんとかしなくては!

震える足に力を入れて私はアレクセイ様へ駆け寄りました。

私の足音に気づいたアレクセイ様が不機嫌そうに顔をしかめます。

「動くなって言っただろ?」

怒られてしまいましたが、今は恐がっている場合では有りません。

「アレクセイ様逃げてください。私が時間を稼ぎますから」

必死に訴えるとアレクセイ様は呆れた目をして言いました。

「どうやって?」

……答えられませんでした。私には計画も力も全くないのですから。

「……何とかしてです」

半ば自棄にやって言うと、小さな溜息を吐かれてしまいました。

「アレクセイ様?」

アレクセイ様は私の呼びかけには答えずに、男性達に向き合いました。

すると男性達は思わず耳を塞ぎたくなる様な怒号を上げたのです。

「邪魔しやがって! あの女を捕まえるのに何日かかったと思ってる!」

「さあな」

身が竦むような怒りをまともに受けているのに、アレクセイ様は飄々とした態度で答えます。

その態度は男性達の怒りを更に大きくしてしまった様で、彼らは腰に差していた短剣を抜き、アレクセイ様へと向けました。

「アレクセイ様!」

私は思わず上げそうになった悲鳴を必死に飲み込むと、アレクセイ様の腕に縋りました。
< 77 / 196 >

この作品をシェア

pagetop