クールな公爵様のゆゆしき恋情
「飲めるか?」

アレクセイ様は先ほど屋台で買った飲み物を私に渡してくれました。有り難く受け取り、コクリと飲むと冷たいレモン水が喉を潤してくれました。

喉が渇いていた為か、とても美味しいです。一気にゴクゴクと飲むと漸く一息つく事が出来ました。

「落ち着いたみたいだな」

「はい、なんとか。アレクセイ様は大丈夫ですか?」

「俺は何とも無い。それより今度もし同じ様な事が有ってもラウラは前に出て来るなよ?」

アレクセイ様は、後半は少し恐い顔になり言いました。

私が、ここで待ってろと言ったアレクセイ様の命令に従わなかった事で気を悪くしてしまったようです。

「先程は申し訳有りませんでした」

深く頭を下げて、しばらくしてからゆっくり顔を上げました。

きちんと謝ったと言うのに、アレクセイ様はなぜだか更に不機嫌になってしまっています。

どうしたのでしょうか? 理由を伺おうとしたのですがそれより前にアレクセイ様が口を開きました。

「そんな風に謝るな」

「ですが、ご命令に従わなかったのは私の落ち度ですから」

「ラウラに命令なんてしていないだろ?」

「……されたと思いますが。アレクセイ様はここから動くなとおっしゃいました」

「あれは!」

アレクセイ様はなぜか苛立った様に声を荒げましたが、直ぐに冷静さを取り戻した様で、はあと大きな溜息を吐いてから私をじろりと見ました。
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