クールな公爵様のゆゆしき恋情

誤解と嫉妬とキス

待ちわびていた知らせが届きました。

お兄様とエステルが明日、アンテス城へ到着するそうなんです。王都からの道中も問題が無かった様で、本当に良かったと思います。

その知らせを届けてくれたのは、使者ではなく、お父様とお母様とグレーテでした。
お兄様達と同時にお戻りと聞いていたのですが、お母様が先に戻って二人を歓迎したいと言い出した為、予定より一日だけ早く王都を出発したそうです。

それだったら先に知らせを頂きたかったのですが、今だにお兄様達の結婚式の余韻に浸っているお母様にあれこれ言っても無駄だろうと思い、大人しく家族の居間へ行き結婚式がいかに素晴らしかったのかを聞く事にしました。


お母様は、お兄様の次代辺境伯に相応しい凛々しさと、エステルの健康的な美しさ、アンテス家の支度品がどれほど見事だったのかを、うっとりとした表情で語っていました。

綺麗なものが好きなグレーテは結婚式の華やかさだけではなく、王都の美しさにも感動した様で、早くもまた王都に行きたいと騒いでいます。

お父様はそんな二人を嬉しそうに眺めて、うんうんと穏やかに頷いています。家族の前だからか、普段は厳しい辺境伯の威厳は全く感じません。

お母様達のお話は尽きる事が有りません。

私としては勿論お兄様達の結婚式の話も聞きたいのですが、そろそろフェルザー公爵アレクセイ様との婚約の真意を、お父様へ問い質したくて仕方が有りませんでした。

ですが残念ながら直ぐには叶いそうに有りませんでした。お母様のお話が長いだけではなく、アレクセイ様が私の隣を離れないからです。

こんな時まで側に居なくてもいいのに、と私は思いましたが、お父様とお母様はアレクセイ様を歓迎していて、家族の語らいの場に居ても何の不自然さも感じ無い様なのです。

と、言うより既に婚約者と言うより、娘の夫へ対する様な扱いなのです。お母様など私よりもアレクセイ様へ多く話しかけています。

これはどういう事なのでしょうか。一刻も早くお父様とお話がしたい私は焦るばかりです。ですが楽しそうなお母様の話の腰を折ったらお父様はきっとお怒りになります。

仕方なく私は適当な用を言い、席を立つ事にしました。

「あら、忙しないわねえ」

お母様は少し嫌そうな顔をしながらも、お兄様達のお話をまだまだしたい様で、直ぐにアレクセイ様へ続きを話し始めました。

アレクセイ様は私に目を向けながらも、お母様を無視する訳にもいかない為、追って来る事は有りませんでした。
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