クールな公爵様のゆゆしき恋情
アレクセイ様の怒りは収まる様子が有りません。

このままではリュシオンの立場が危うくなるかもしれません。

昔に戻ってしまった様なアレクセイ様は恐いけれど、私が私が黙っていたままでは、退くことはないでしょう。

私はリュシオンの背中に小さな声をかけました。

「リュシオン。アレクセイ様と話します」

「しかし……」

「心配してくれてありがとう。でも大丈夫です」

内心の不安を隠してそう言うと、リュシオンは浮かない表情のままでしたけれど、私の前から三歩程脇に移動しました。

同時にアレクセイ様が私の所にやって来ます。

王族らしい華やかな容貌のアレクセイ様ですが、私よりずっと身体は大きく、腰には剣を帯びています。そんな相手が怒りの形相で近付いて来るのですから逃げ出したくなってしまいます。

それでもなんとか立ち上がると、アレクセイ様は私の腕を掴み、お城の中へと早足で向かって行きました。

半ば引き摺られる様にして、私は外廊下への出入り口近くに一室に連れ込まれました。

何に使っているのかは分かりませんが、人が十人も入ればいっぱいになりそうな狭い部屋です。

机も無い部屋の隅に私は追いやられ、その前にはアレクセイ様が立ち塞がりました。身動きが取れない状態になり、私は不安に身体を小さくしながら、アレクセイ様の言葉を待ちました。
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