エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜

何気なくそちらを振り向くと、外国のポストカードを売っている隣りのスペースで店番をしている男の人と目が合った。

私はあわてて視線をそらす。

私の目の色に気づいたのかな……やっぱりカラーコンタクトは必要かもしれない。

居心地が悪くなって、私はそっとその場を離れた。


今度は古本の店が集まっている場所まで行ってみる。

絵本が並べられたワゴンの中をのぞいていると……また横から、強い視線を感じた。

また何気なくそちらを向くと―――。


(……さっきの人?)


さっきマッチの店にいた時に目が合った男の人がそこにいて、やっぱりまた目が合った。


(偶然……だよね)


私があそこを離れたあと偶然この人も店の席を立って、偶然この古本の店を見に来たんだ。

私のあとをつけてきたわけじゃない。

たまたまだ……そう思って視線を絵本に戻す。

けれど、いつまでたっても相手の視線が私から離れる気配はなかった。

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