エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
『花の庭』。
私が『原石園』に行く前に下働きをしていた、『リーフ』の女性だけを集めた娼館の名前だ。
アラキさんはそこで私の面倒をみてくれていたねえさんの恋人だった人で、当時は『花の庭』に卸売りをしていた酒屋の従業員だった。
私はよく、店に配達に来た彼からねえさんへの伝言を言付かったり、ねえさんから手紙をあずかって彼のところへ行ったりしたものだ。
花街界隈には荒っぽい雰囲気の男の人がたくさんいて、アラキさんもそういう若者のひとりだった。
その頃の彼の髪は短い黒髪で、それをツンツンと攻撃的に逆立てていた。
胸元のドクロのイレズミを見せびらかすように、いつも衿ぐりの広いシャツを着ていたのを覚えている。
今日は普通のTシャツを着ていて隠れているけど、最初からそのイレズミが見えていたら、出会ってすぐに彼がアラキさんだとわかったはずだ。