エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
大柄で怖そうなアラキさんは、けれど見た目に反して、とても気さくで人懐っこいお兄さんだった。
「ミズホの娘なら、それは俺の娘ってことだからな。遠慮しないで『お父さん』て呼んでいいんだぞ」
快活に笑いながら、そんなどこからつっこんでいいかわからないようなことを言ってはねえさんを呆れさせていたけど、
ねえさんもきっと、彼のそういう所が好きだったんだろう。
お父さんて呼べよお、と迫るアラキさんと、やだぁ、と笑い声をあげて逃げる私の姿を、彼女はいつも優しい目をして見守っていた。
そんなことを思い出す。
「にしても、カンバラ財閥の三男に引き取られてお嬢様暮らしか。
あの店にいても身請けの話くらいあったかもしれんが、『境』に女を買いに来るような金持ちなんてたかが知れてるもんな。
すげえな、大出世じゃねえか」