エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
愕然とする。
子供の頃の大事な思い出が、心と一緒に千切れていくようだった。
強くつぶったまぶたの縁から、自分でも気付かないうちに涙があふれた。
「あーあ、泣くなよ。なあ、涙とかいいからさ、声出せよ。ほら」
肌の触り心地を楽しむように動いていた手の平が、新しい目的を持ったようにうごめき始める。
ふくらみを撫でる熱い手の甲、尖った先をはじく太い指。
私の内から何かを呼び起こそうとするような、熱心な動き。
私はくちびるを噛みしめ、ただひたすらにその不快な感触に耐える。
と、その時、首筋に熱い吐息が触れた。
次の瞬間、ぬるり、と生あたたかく湿ったものが首筋を這う感触に、私は思わずビクッとして目を見開いた。
これ……舌……!?
「ひっ……や、だ……!」
アラキさんの舌はひとしきり私の首や鎖骨を舐め回すと、胸元まで下りてきて、その先端をとらえた。
(……!?)
濡れた舌先に転がされ、もう一方は指先でもてあそばれて……
その瞬間、恐怖でも不快感でもないゾクゾクとしたものが、私の背中を走り抜けた。