エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
玄関先での揉めごとを、私はただぼんやりと、天井を見つめながら聞いていた。
おい!とアラキさんの大声がしたのと同時に、バタバタと足音が響いて、部屋に人が駆け込んできた。
「リイナ!!」
―――え……?
聞き覚えのある声に名前を呼ばれて、私はその人に視線を向ける。
鳶色の髪を乱し、泣き出しそうに顔を歪めて、その人は私に駆け寄ってくる―――。
(ハルヒコ……様……)
ああ、私、助かったんだ。
そう気付いたと同時に、意識が遠のいて―――
縛られた腕を解放され、強く抱きしめられたと思ったのを最後に、私は意識を失った。
***