エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜

それから、ルイさん。

ルイさんは以前よりも私に話しかけてくる回数が増えた。

それまで事務的な話しかしたことのなかったルイさんからいきなり「あなた、ツメの形がきれいね。桜貝みたい」なんて言われたときにはぎょっとしたけど……

逆に、さっきみたいに私が決められた時間以外にマジュの部屋にいたのがバレてもあまりとがめることはしなくなった。

たぶん、女性で看護婦の彼女なら今の私に寄り添うのに適任だと考えたハルヒコ様が、私を見守るように彼女に頼んだんだろう。

だけど私としては、正直、やりにくい。

態度は優しくなっても、ルイさんの表情は相変わらず淡々としているし、笑顔だってほとんど見せない。

私をじっと見つめてくるクールなまなざしは、見守っているというより観察しているといった方が合っている気がして、
居心地が悪い。

結局、以前よりもさらにルイさんのことが苦手になってしまった。






―――そして、私は。



私自身は、あれから……。





私は、何も変わらない。


何があったって、私はただ自分のやるべきことをやるだけ。

マジュを一日でも早く目覚めさて、私の価値を証明するんだ。

傷付いて落ち込んでるヒマなんてない。



そのはずなのに―――。

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