エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜

マジュへの治癒は、今まで通り毎日行っている。

マジュの手を握って、彼女の中に『透明な手』を差し込んで、その心を覆う殻を溶かすために力を注ぐ―――

やっていることは以前と何も変わらない。

なのに、殻が溶けるペースがガクンと落ちた。

殻に触れ、柔らかくしようといくら働きかけても、力はその表面をすべるばかりでなかなか内側に浸透してくれない。

まるで彼女の心が、さらに硬くなって私を拒んでいるみたいに……



……ううん、ちがう。


本当はわかってる。


変わったのはマジュじゃなくて、私のほうだ。


<グリーン>の力を効果的に発揮しようとするとき、一番必要なのはエネルギーの強さやテクニックではない。

精神を集中させる力。

それがしっかりしていないと、相手に『透明な手』を差し込んだとしてもそれをうまく操ることができない。

当然、力をうまく注ぐこともできなくなる。


―――つまり今の私には、自分の力を操るための集中力が欠けてしまっているのだった。

< 162 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop