エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
使用人たちに私を紹介し、食堂や談話室、来賓室などのある一階を案内してくれた後、ハルヒコ様はこれから私が使うことになる二回の部屋へと私を連れてきた。
「すまないね、君の好みも聞かずに勝手に調度品を揃えてしまったんだけれど」
気に入らなかったら言ってほしい、と言うハルヒコ様に、とんでもないです、と私は首を振った。
お屋敷の外観と同じくアンティーク調の家具と内装でととのえられたその部屋は、私が『園』で使っていた部屋の広さの三倍はありそうだった。
高級そうな光沢のある花模様のカーテンにシーツカバー、小柄な私が眠るには大きすぎるような立派なベッド。
二階の一番端になるこの部屋にはバルコニーはついてないけれど、窓は大きく、日当たりもよさそうだ。
文句などつけようもない、素敵な部屋だった。
「私には十分すぎるお部屋です。ありがとうございます、旦那様」
私がお礼を言うと、ハルヒコ様は嬉しそうにほほえんだ。
そういう風に笑う彼の顔は、何だか子供みたいに見える。
20も年上の大人のことをそんなふうに思うのは、変かもしれないけど。