エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜

花街にはいくつかの『緑の宿』―――リーフの女の子だけを集めた娼館―――があって、私はその中の一軒、『花の庭』という名前の店で下働きすることになった。


アルコールの匂い、怒鳴り声や暴力沙汰、生々しい痴情のもつれ。

10歳にもならない子供が働くにはひどすぎる環境だったけれど、幸いだったのは、娼婦のねえさんたちが私をかわいがってくれたことだった。

中でも店一番の美人で稼ぎ頭だったねえさんは、自分の娘のように私の面倒をみてくれた。

「リイナは綺麗な娘だから、大きくなって客をとるようになったらあっという間に私を追い抜いてここの稼ぎ頭になるよ。そうしたら私は引退してあんたの世話になるから、よろしくね」

そんな冗談を言って笑うねえさんのことが、私は好きだった。







ある時ねえさんが、客からもらった流行り病に倒れた。

何日も高熱が続いて下がらず、最後には意識もなくなり、医者は「もうダメだろう」と首を振った。

医者が治せないと言った重い病を、私たち〈リーフ〉が治せるわけもない。

けれど、苦しみを少しでも減らしてあげることができれば。

そう思い、私はねえさんの手を握った。

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