エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
その時、使用人の人が彼を呼びに来た。
「会社から電話?ああ、わかった。リイナ、すぐ戻ってくるから少し待っていてくれ。ここはもう君の部屋だから、好きにくつろいでいてくれて構わないからね」
そう言って部屋を出ていくハルヒコ様を見送ってから、私はベッドに腰を下ろした。
ふかふかの座りごこち。
思いきってそのまま後ろに倒れてみると、羽みたいな柔らかさの中に身体が沈み込む。
見上げた天井には、水仙の花が群れて咲いているような、メルヘンチックな形の照明が下がっていた。
これからここで、新しい生活が始まる。
少しずつ、そんな実感がわいてくる。
〈グリーン〉としてお金持ちに買われて、不自由のない生活をする―――それが私の夢。
『園』でがんばって、ハルヒコ様に買われて、ここまで来れた。
でもまだ、夢を叶えたと喜ぶには早すぎる。
ずっとここで暮らしていけるかどうかは、私がマジュを救えるかどうかにかかってる。
私がハルヒコ様の期待に応えられるかどうかに―――。
「―――?」
ふと、誰かに見られているような気がした。