エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
年下の女の子が出てくるとばかり思っていた私は、困惑して立ちつくす。
ハルヒコ様は私の様子になど気付かずに彼女に近づいていき、ベッドの端へ腰を下ろすと、眠る娘の白い頬を手のひらで包み込んだ。
「ただいま、マジュ。今日は君の友達を連れて帰って来たんだよ。これからこの家で一緒に暮らすんだ。リイナという名前の、かわいい女の子だ。……リイナ?」
ハルヒコ様は立ち止まったまま動かない私に気付いて、訝しげな顔になる。
けれどすぐに何かに納得したように、「大丈夫だよ」とほほえんだ。
「君が触れればすぐに彼女が目覚めるだなんて思っていない。今彼女が目覚めなかったとしても、君に失望したりなんてしないよ。
長い間意識のない人間を呼び戻すには、同じくらい長い期間の治癒行為が必要となる。
『園』の方からちゃんと説明は受けている。心配しないでいい。
今日はただ、この子に会って欲しいだけだから。……さあ、リイナ」
ハルヒコ様は、私の動揺の理由を勘違いしたみたいだ。
いや、確かに彼の言うような心配もあったけれど、そうではなくて……。
でも、と私は何とか気を取り直した。
私にはマジュの年齢なんか、関係ないはず。
それこそ彼女が赤ん坊やお婆さんだったとしても、私のやるべきことは何も変わらないのだ。