エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
そう自分に言い聞かせ、ベッドへと歩み寄る。
ハルヒコ様に促されるまま、私は美しい少女の顔をのぞき込んだ。
「……初めまして、マジュ様。リイナと申します」
おそるおそる挨拶をした私の声に、けれど反応は返らない。
開くことのないまぶた、動かないくちびる。
呼吸の音さえ小さすぎて聞こえず、かすかに上下する胸元だけが、彼女が生きた人間である唯一の証みたいに見える。
「……ふふ、リイナはこんなにかわいらしいのに、目を開けて見ないなんてもったいないぞ、マジュ」
ハルヒコ様は冗談めかして言いながら、娘の髪を撫でている。
その手つきも、彼女に注がれるまなざしも、とても愛おしげだ。
けれど同時に、その鳶色の瞳はひどく寂しげだった。
それを見た私の胸まで締めつけられてしまうくらいに。
(ハルヒコ様……。私がマジュを目覚めさせることが出来たら、この人もこんな顔をしないでよくなるんだ……)
「リイナ、もう少しこの子に話をしてあげてくれるかな?君のことをもっと教えてあげてほしい」
「あ……はい」
ハルヒコ様が椅子を持ってきて、私はそこに座らされた。
私のことを教える……私が〈リーフ〉だってことを話せばいいのかな?
どうせ彼女の耳には入らないだろうけど……。
手を握ってあげて、とハルヒコ様が言うので、私はマジュの手を取った。