エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
「―――っ!」
そこで私は我に返った。
目の前には、白いネグリジェのマジュが眠っている。
彼女の手はまだ私の手の中にあったけれど、すでに逆流は止まったようだ。
もう何も見えない。
だけど。
(なに……今の……)
自分が何を見たのかを理解するにつれて、心臓の音が速度を上げていくのがわかった。
(マジュ……あなた……)
「リイナ?」
呼ぶ声に、私は思わずビクっと肩を震わせた。
ハッとしてそちらを見ると、ハルヒコ様がそんな私の反応に驚いたように目を瞬かせている。
「どうかしたかい?いきなり顔色が悪くなったけれど」
「あ……いいえ、ただ、マジュ様の手がすごく冷たかったから……驚いて……」
あわてて弁解すると、ハルヒコ様は「そうか」と穏やかに鳶色の瞳を細めた。
「いつもそうなんだ。いくら握っても冷たいままでね……。どうかあたためてあげてくれ、リイナ」
ハルヒコ様は言って、私たちの手の上に自分の両手を重ねて包み込んだ。
あたたかな体温が、私の手の甲に伝わってくる……。
けれどその手の感触は、私の心臓の打つスピードをさらに加速させた。