エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
欠けた思い出





***


逆流。


それは、私たち〈グリーン〉が治癒対象に力を注ぎ込む際に、まれに起こってしまう現象だった。


力を注ぐ、というのは―――見えない手を相手の中に差し込むようなもの、とでもいえばいいだろうか。

手の形をした「力」で、相手の内側を探るのだ。

内側といっても、骨や内臓に触れるわけじゃない。

透明な手が探るのは、「人間の中身」。

肉体でもあり精神でもある、抽象的な空間だ。

そこを探ることで、その人が「患っている」部分を見つけることができる。

その部分は、触れればその感触でそれだとわかる。

「患部」は心臓や肺などといった肉体の一部だったり、傷ついた心や疲れ切った精神だったりと様々だ。

〈グリーン〉は、探り当てた「患部」に自分の力を注ぐことで相手を癒す。

悪い熱のたまった場所に、心地よい空気を送り込むような作業だ。

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