エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜

マジュに触れたときに起こったのは、まさにその「逆流」だった。

しかも、こちらが治癒行為を始めようともしないうちから向こうの手が伸びてきて、その激しい流れに、私はあっというまに飲まれてしまった。

逆流自体は『園』での訓練の時に何度か経験してきたけれど、こんなことは初めてだった。


それはつまり、マジュの内側にはそれだけ強烈に刻まれた記憶や感情があったということ。

そしてそれが、閉ざされた彼女の意識の中で、行き場もなく渦巻いていたということだ。



強烈に刻まれた―――




それは父と娘の、淫靡な罪の記憶。




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