エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
さりげなく聞こえるように気を使いながら、私は写真に写るマジュのことを口にした。
「見られて困るものじゃない」の言葉通り、この写真のこと、ハルヒコ様は私に見られても特に何も思わないようだ。
わざわざ教えるつもりもなかったけれど、知られたからといって別に……ということかもしれない。
だから思い切って、私は自分から話を振ってみた。
その方が彼もマジュについての話をしやすくなるだろうと、そう思って。
―――けれど、私の言葉に対してハルヒコ様が見せた反応は、私が想像したものとは違っていた。
「……マジュ?」
ハルヒコ様は写真から顔を上げ、不思議そうな表情で私を見た。
なぜ今マジュの名前が出たのかわからない、とでもいうように。
「……?……はい。この女の子、マジュ様ですよね。……違いましたか?」
早とちりだったか?と内心焦りながら、私は控えめに尋ねる。
ハルヒコ様はそれには答えず、不思議そうな顔のままで、もう一度写真に視線を戻した。
そうして、写真の中の少女の姿を指でなぞり出す。
まるで、今初めてそこにその人物が写っていることに気づいたようにして。