エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
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―――集中できない。
ペンを握ったまま、私は深くため息をついた。
机に広げた本の内容も、それを書き写すノートの文字も、さっぱり頭に入っている気がしない。
諦めてペンを置く。
マジュの部屋へ行こうかと考えたけど、時計を見るとようやく午後3時を回ったところだ。
この時間ではまだルイさんがいる。
最初は好きな時にやれるだけ行っていたマジュへの治癒は、今は午前中に行うように決められていた。
午後に屋敷にやってくるルイさんが、マジュの脳波や体温などを測定して、マジュの身体が順調に目覚めへと向かっているかを確かめる。
治癒の時間を長く取りたいからといって、彼女の仕事を邪魔するわけにもいかない。
それに、はっきりいって私はルイさんが苦手だ。
いるのがわかっているなら、近づかないに限る。