エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
もしあれが現実にあった光景だとすれば、七年前の出来事ということになる。
今の私よりも少し年下のマジュ。
幼くかわいらしいばかりの時期は過ぎて、あどけなさの中に花開く前の蕾のような繊細な気配を秘めた、美しい少女。
彼女の目の前では、ハルヒコ様が眠っていた。
疲れきった様子だったのは、妻を亡くした悲しみに暮れていたせいに違いない。
そんな父親に、母を亡くしたばかりの少女はそっと寄り添って……
そして、彼のくちびるにキスをした。
薄く色づいた少女のくちびるが、かすかな寝息を漏らすハルヒコ様のくちびるをふさいだ―――
『愛しているわ、お父様』
(……っだめ、何してるの私)
ぼんやりと自分のくちびるを指でなぞっていることに気付き、ハッとなって頭を振る。