エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜

やっぱり集中できない。

部屋を出て気分を変えた方がよさそうだ。

散歩でもしてこよう。

そう思って目の前の本を閉じようとしたところでふと思い出し、私は机の引き出しを探った。

(あった)

黒い小箱。

中身はブックマーカーだ。

取り出して、ページに挟んでみる。

木肌のような模様の入った金色のマーカー部分の先に、金の台座に嵌め込まれた赤い石のチャームが揺れている。

大粒のルビーでできたリンゴの実だ。

ちょこんと生えた金の葉がかわいい。

トウジ様からの贈り物だった。


(これをもらってから、もう三日もたつんだ……)


三日前。


トウジ様が再びこの屋敷を訪ねてきた夜のことを、私は思い出す。


私が屋根裏の書庫でハルヒコ様夫妻と幼いマジュが写る結婚記念写真を見つけてから、ちょうど一週間が過ぎた日のことだった。


***

< 68 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop