エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
今は手を触れているわけでもないのに、あのとき感じたマジュの感情が再び自分の中に流れ込んでくるような気がして、私は思わず胸を押さえた。
(ハルヒコ様……ハルヒコ様は、マジュの気持ちを知ってたの?)
彼の寝顔に問いかける。
あなたは彼女の想いを何も知らなかった?
娘としてしか見ていなかった?
それとも……ほんの少しくらいは女性として見ている部分があった?
(マジュはあなたのことを愛していたのよ、ハルヒコ様)
疲れきった寝顔。
「逆流」の光景の中でも、ハルヒコ様はこんな顔をして眠っていた。
あのとき、マジュは彼の涙の跡を指でなぞった……。
(こんなふうに……)
今は乾いているハルヒコ様の頬に、私は自分の指先をそっと触れさせた。