エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
あのときのマジュを真似るように頬をツウっと下になぞった指は、くちびるへとたどり着く。
薄く開いたすきまからこぼれる呼気が、指の腹に吹きかかる。
熱く湿った感触に、身体の芯がぞくんと震えた。
(ハルヒコ様……)
もっとこの感触を……
もっと、このひとを……―――。
私は彼のくちびるに向かって、自分の顔を近づけて―――。
「ん……」
小さなうめきと共に、ハルヒコ様がうっすらと目を開いた。
それと同時に、私は我に返った。
(な……にしてるの、私……!?)
飛び退くようにしてハルヒコ様から離れる。
心臓がドクドクと痛いくらいに音をたてている。
自分のしていたこと―――しようとしていたことが、信じられなかった。
(どうして……)
「……リイナ?」
完全に目を開いたハルヒコ様が、鳶色の瞳ではっきりと私をとらえた。