エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
私は動揺のあまり、何も言えないままそこに立ちつくすしかなかった。
どうしよう、何でハルヒコ様にこんなこと……どうすればいい……?
「ああ……眠ってしまったんだな」
ハルヒコ様はそうつぶやくと、のろのろと身体を起こした。
「ゆうべあまり寝れなかったせいかな、ついウトウトして……。
どうしたんだいリイナ、この部屋に忘れ物でもしたかい?」
目元をこすりながら、彼はいつもと変わらない穏やかな微笑みを私に向けてくる。
どうやら、私がしていたことにはまったく気が付かなかったみたいだ。
よかった……。
「リイナ?」
安心したのが顔に出てしまったのか、ハルヒコ様が不思議そうに首をかしげる。
「い、いえ、あの……忘れ物というか……マジュ様のお顔が見たくなっただけというか……その……」