エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
ホッとするのはまだ早かった。
この時間にマジュの部屋を訪れたのを見つかってしまった問題がまだ残っていたのだ。
うまい言い訳が出てこず、しどろもどろになってしまう。
ハルヒコ様は、何とか言葉をひねり出そうとする私をしばらく眺めたあと、ふいに苦笑した。
「そういえば、ルイさんが言ってたな。決められた時間以外に治癒行為を行おうとする悪い子がいるって」
君のことかい?リイナ。
そう尋ねながらいたずらっぽく目配せされ、私は言い訳をあきらめて口をつぐむしかなかった。
「リイナ、気持ちは嬉しいけど、焦ってはいけないよ。
言ったろう、治癒を行うのに最適なのは一日に何時間程度なのか、医師と話し合って決めたことなんだ。
マジュだけじゃない、力を使う側の君の負担も考えてのことなんだよ」
「はい……ごめんなさい、旦那様」
私は素直にあやまった。
うなだれながら、部屋に帰りなさいと言われるのを待つ。
けれど……ハルヒコ様の口から出たのは、私の予想とは違うことばだった。