溺愛〜ラビリンス〜

「何かあればすぐ連絡がくる。心配するな…」


本当にコイツは長い付き合いとは言え俺の気持ちを読むな…そう思いながら


「あぁ…」


と返事をした。







爽が出て行ってから一時間程経った頃、渉の携帯が鳴った。


「はい。」


携帯に出た渉が何か報告を受け次の瞬間慌てた様に大きな声を出した。


「えっ!?」


その声に俺の嫌な予感が更に膨らむ。渉を見つめ様子を伺えば、良い報告じゃないだろう。
息を詰め渉からの報告を待つ。


携帯を切った渉は気のせいか青い顔をしていた。思わず息を飲んで渉の言葉を待つ。


「翔真…柚ちゃんが見つからない…」


それだけ言うと渉は力無くソファーに座り込んだ。


嘘だろ… 今まで俺に行き先も言わず居なくなった事なんてないんだぞ?
柚の意志じゃないって事か…

俺は立ち上がり渉に指示を出した。


「チーム総出で探せ。凌にはすぐ戻って情報収集する様に伝えろ。」


「了解。」


渉はすぐに幹部室を出て行った。


俺は込み上げる不安と怒りをテーブルにぶつけ蹴飛ばした。





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