溺愛〜ラビリンス〜

『答えろ!柚が居ないのか?』


インターホン越しに坂本が焦った声で怒鳴っている。


「ハァ、…そうだ。」


『バン!』


俺の返事を聞いて坂本が暴れているようだ。インターホン越しに猛獣の様になっている坂本が手に取るように分かる。ここにも危険な状態の奴がいるか……でも今はお前に構っていられないんだよ…俺は暴れる坂本をそのまま放置してマンションを後にした。



途中にある公園でバイクを止め渉に電話する。


『はい。』


いつもより低い声の渉。

「今、坂本に当たって来た。白だと思う。」


『あぁ…健人、鷹宮が柚ちゃんを抱えて車に乗って学校から消えたって情報が入った。鷹宮の方には爽達が行っているけど、念のため健人達もすぐ動ける様にしといてくれ…』


「…了解。」


爽達が鷹宮を当たっているのに特攻を動かす…そんな深刻なのか?アイツがそんな大それた事しそうには思えないが…
でもさっきの渉の声から俺が楽観視し過ぎなのかもしれないな…


兎に角、指示通り準備する様に小隊長の沢田と吉井に伝えた。


そしてこの後、俺は予想以上の最悪な状況を知る事になる。





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