溺愛〜ラビリンス〜

奥に秋津も居たがパソコンを弄りこちらを見る事はなかった。


部屋の中に足を踏み入れ俺から切り出す。


「柚が居ないってどういう事だ?」


低い声で問いただせば、答えたのは渉だった。


「放課後、翔真にメールしてきてから連絡が取れない。今チームが探しているけど行方は分からない…」


苦しそうな表情で説明する渉をそのままに翔真に向かって怒りをぶつける。


「お前何やってんだよ!あの時、柚の事絶対守るって言ったのは嘘だったのかよ!」


俺が怒鳴れば、翔真が冷静な口調で言った。


「何故此処に来た?此処はお前が来る場所じゃねぇだろ?」


「ふざけんな!柚が居なくなったのにほっとけるかよ!」


完全に頭に血が昇って翔真に掴みかかろうとする俺に渉が割って入る。


「悠斗、翔真も冷静な訳じゃないんだ。お前達二人共、目的は一緒なんだから今は争うな。」


「ハァ。」


渉はため息を1つつく。


「翔真、柚ちゃんが見つかるまで悠斗と休戦しよう。早く柚ちゃんを見つけないと本当にまずいよ。」


渉の言葉に翔真の顔が歪む。




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