溺愛〜ラビリンス〜
切符を買いホームで電車を待っていた。
電車が来て乗り込もうとすると私を呼ぶ声が聞こえた。
「ユズユズ!」
聞き覚えのある声に振り向くと、通りからバイクに跨がったままこちらを見ている爽くんが居た。
イヤ…誰にも会いたくない!
慌てて視線を反らして電車に乗り込もとする私の背中に爽くんの声が悲愴な色合いで響き突き刺さる。
「ユズユズ!行くな!」
ダメなんだよ…爽くん。
私は行かなくちゃならないの…翔兄ぃやみんなの傍にもう居られないから。
電車の中から振り返り、声を振り絞って爽くんに私の気持ちを伝える。
「爽くん、翔兄ぃに伝えて!探さないでって…」
「ダメだ!翔真が昨日からどれだけ必死に探してると思うんだよ!一緒に帰ろう。」
私の言葉に焦った様子ででも爽くんは私を説得しようと優しく真剣な表情で言ってくれる。でも…ダメだよ。
「ゴメンなさい。みんなの傍にもう居られないの!翔兄ぃに私の事は忘れてって…」
そこで電車のドアが閉まり発車した。
ごめんなさい爽くん…
ガラス越し爽くんが何か叫んでいた。