溺愛〜ラビリンス〜
捕まえられなかった時の手を打っておいてよかった。翔真は柚ちゃんを捕まえられなかった事を知れば荒れるだろうな…
「ハァ…頭痛いな…」
幹部室で一人呟いた。
都築から連絡が来たのはその日の晩遅くだった。
『都築だ。そちらの姫が見つかった。』
待っていた情報に気持ちが逸る。
「本当か?姫は怪我とかしてない?無事?」
俺の会話で柚ちゃんが見つかった事を悟った翔真をはじめとする幹部達が俺の表情をじっと見つめる。
『無事だ。見た感じ怪我もしてない。』
「そう…良かった…」
ホッとすると俺の声に幹部室の空気も和らいでいた。
『ただ…姫はすぐにそちらに戻せない。』
「ハッ?」
俺の大きな声に今度はみんなが息を飲む。
「どう言う事だ?」
少し低い声を出して聞く。早く返してもらわなきゃ大変な奴が一人いるんだ。さっさと返してもらわなきゃ困る。
『…実は見つけたと言うより姫の方がこちらに来た。』
都築から聞かされた意外な事実にまた大きな声を上げる。