溺愛〜ラビリンス〜
「マンションから逃げて来たんだけど……私…もう何処にも…行く所がなくて…ゴメン、有希に頼るしかなかったの…」
辛そうに話す柚ちゃん。
「分かった…大丈夫だよ。気にしないで!」
「私誰も知らない所に…行こうと思ったんだけど…昨日あんな事があって…そのまま…逃げて来たから、取りあえず匿って貰って落ち着いたら遠くへ行くつもり。」
柚ちゃんは決心している様で強い意志を感じた。
「…取り合えず遥に頼んですぐ迎えに来てもらうから王龍に匿ってもらおう?大丈夫!待ってて…」
そう言って席を立つと背後から柚ちゃんの小さい声が聞こえてきた。
「ありがとう…有希…」
私は振り向く事ができなかった。柚ちゃんの気持ちを思うとかわいそうで、悔しくて涙が出てしまったから、泣き顔を柚ちゃんに見せられなかった。
トイレ近くの廊下で立ち止まり辺りを確定して涙を拭く。バックから携帯を出して遥に電話する。
3コール目を待たずに遥が出た。
「有希!」
「遥…あのね…」
「今何処にいる?」
遥の焦った様子に何かあったのかと不安になる。