溺愛〜ラビリンス〜
『渉…柚に会わせてくれ。』
悠斗の声は柚ちゃんを心配しているのがよく分かる程、切実なものだった。
「…分かった。ただし俺達に同行するのは無理だ。連れ戻して柚ちゃんが落ち着いたら会わせる。それまで待ってくれ。」
『チッ。』
「柚ちゃんの情報は今後も入れる。」
『…ハア…分かった。逐一情報は入れてくれ。』
「あぁ…じゃあな?」
電話を切ってため息を吐く。
悠斗は柚ちゃんの元に駆けつけたいんだろう。その気持ちは痛い程分かる。だが、部外者の悠斗をチームに同行させる訳にはいかない。
柚ちゃんはブラックホークスの姫だ。俺達だけでいかないと…今回は王龍まで巻き込んでいる。都築の手前も、悠斗を介入させる訳にはいかない。
俺はひとつため息を吐いて幹部室へと戻った。