溺愛〜ラビリンス〜

店内を奥へと進み翔真が声をあげた。


「柚!」


翔真の声に振り向き翔真を確認するとユズ姫は顔を歪めた。


「ッツ!翔…兄ぃ…イヤ!来ないで!」


そしてとても悲しそうに激しい拒絶の言葉を言った。

翔真はユズ姫の言葉を気にしていない様子で近づく。


「柚、帰ろう。大丈夫だ何も心配いらない。今までと何も変わらない…だから俺と一緒に帰ろう?」


とても優しい言葉でユズ姫に語りかけた。でもユズ姫は翔真の言葉に余計悲しそうな顔になり涙を溢して首を横に振る。


「ダメ!ダメなの…」


悲痛な声で叫ぶユズ姫にいよいよ芝居が開始された。


「…柚ちゃん…気持ちは分かるけど、これは柚ちゃん一人の問題じゃないんだよ?」


渉が口を開いた。そして都築の方を向き低い声で 副総長の威圧感を出す。


「都築…どういうつもりだ?うちと戦争するつもりか?」


その声に二人の姫はビクッと肩を揺らし、ユズ姫の顔は真っ青になっていた。


「渉くん…ちがっ…違うの。」


「柚ちゃん言い訳は都築から聞く。うちの姫を返さないって言うならそれなりの制裁をする。」




< 156 / 671 >

この作品をシェア

pagetop