溺愛〜ラビリンス〜

「ッツ!お願い私を見逃して!」


でも笠原くんは困った顔をして首を横に振る。


「…すみません。それはできません。」


「小田くんお願い!」


隣にいる小田くんに視線を移して頼む。


「…だめです。」


小田くんも辛そうな表情をして目を反らし断られてしまう。


「ウッ…」


思わず涙が出る。


「柚ちゃん!あなた達、柚ちゃんを泣かせないで!」


有希が心配して割って入る。そんな時だった。翔兄ぃの声が店内に響いたのは…


「柚!」


声のする方に振り向くと翔兄ぃが立っていた。


私は翔兄ぃの顔を見る事ができない。そして思わず激しい拒絶の言葉を発した。


「ッツ!翔…兄ぃ…イヤ!来ないで!」


翔兄ぃは私がひどい言葉を言ったのに優しく話しかけてくる。


「柚、帰ろう?大丈夫だ何も心配いらない。今までと何も変わらない…だから俺と一緒に帰ろう?」


翔兄ぃ、優しすぎるよ…私の事なんかもう放って置いてよ!涙が溢れる。


「ダメ!ダメなの…」


私は叫んでいた。
翔兄ぃの後ろにいた渉くんが、いつもより固い表情をして口を開いた。





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