溺愛〜ラビリンス〜
「何だ?親父にでも何か言われたか?」
お袋と違って親父は俺を組の傘下の娘とくっ付けたいらしいからな…
「いや今の話は親父は関係ない…俺が聞きたかっただけだ。悪かったな…」
龍也はそれ以上この話を続けようとしていないのが雰囲気で分かった。
コイツが意味もなくものを聞く事はない。きっと何か理由があって聞いたんだろう…でも理由を言いたくねぇんだろう…俺もそれ以上聞かなかった。
その理由を知るのは先の事…俺はこの時龍也にもっと聞いておけば…と思う事になる。
この時の俺は、自分の気持ちと柚の事で一杯だった…
「連れて来たぞ。」
大輝が淳稀を連れ部屋に入って来た。
「あぁ…」
大輝の後ろに立つ淳稀を見ながら返事をする。
「淳稀座れ。」
俺が言うと淳稀は無言で俺の正面のソファに座った。
「…翔真にかなりやられた様だな…」
淳稀の顔を見ると殴られて傷があり頬は腫れていて変色していた。多分体もやられてるんだろう…
「…」
返事をしない淳稀に龍也が苛々した様子で怒鳴る。