溺愛〜ラビリンス〜

俺が黙って見ている間に、渉が柚の怒りに火を注ぐような事を言う。渉ふざけんなよ!俺が渉を睨む横で柚がまだ渉と会話を続けている。


「渉くんもそう思う?」


柚は渉が自分の理解者だと思っているようだ…


「思う思う…」


調子の良い事を言う渉を怒鳴ろうとした時、柚がとんでもない事を言った。


「翔兄ぃが私に隠し事するなら、私もこれからは翔兄ぃに隠し事するから!」


ハァ?柚…何言ってんだ?そんなの許す訳ないだろ!思わず渉への怒鳴り声を引っ込めて柚へと向かって声を発した。


「柚…隠し事するのは許さないぞ?」


思わず低い声が出てしまう。でもそんな事許す訳にいかない。


「翔兄ぃ?」


柚は俺が自分に低い声を向けた事にビックリした顔をしている。


「翔兄ぃだって隠し事をずーっとしてきたじゃない!怒っているのは私なんだから!」


それでも柚は相当ヘソを曲げてしまったようですぐに反撃してきた。こういう時の柚は頑固で絶対に折れないから、俺が早目に折れた方が良いのは長年の経験で分かっている…


「柚、ゴメンな?悪かった。でもな?隠し事していた訳じゃないんだ…」




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