溺愛〜ラビリンス〜
ここは普段から施錠されていて出入りする事はしないし、使用する事は禁止されていて誰も鍵を開けない。
内側から施錠されている鍵をカチャリと開け外に出る。踊り場に出てそこから外階段を見下ろす。
階段下周辺には人気がなかった。今なら誰にも見つからずここを離れられる。
私はできるだけ足音をたてない様にして階段を下りた。
下へたどり着くと壁づたいに歩き裏門へ向かった。ラッキーな事に裏門周辺に人はいなかった。裏門も普段施錠されている。近づくとやっぱり南京錠でしっかり施錠されていて門は開かない。
どうしようか迷っている時間はなくて、思いきって門によじ登って敷地を出る事に成功した。
高い所はそんなに得意じゃないから凄くドキドキしたけど、怖さよりここから出たかった。
ごめんなさい…翔兄ぃ…きっと心配するよね?でも少し時間をちょうだい。今はどうして良いか分からないから…
敷地を出て走り出して家へと向かった。
どこをどう走ったのか覚えてないけど、気がついたら見慣れた景色になっていてもう少しで家に着く所まで来ていた。
「ハァハァ…ハァッツハァ…」
息が切れて苦しい。