溺愛〜ラビリンス〜

「高瀬くんも満姫の気持ちを尊重してあなたを産む事に同意して、二人は学生だったけど結婚したの。満姫は幸せそうだった…でも…」


お母さんは辛そうな表情になり顔を歪ませた。


「妊娠中も体調が良くなくて、更に出産が難産で大変だった満姫はあなたを産んですぐ死んでしまったの。残された高瀬くんは辛かっただろうけど…悲しんでいられなかった…だって生まればかりのあなたをかかえ、しかもまだ学生でしょ?生活もあるし…大変だったと思う。」


お母さんの言っている事は良く分かる。まだ就職していない学生のお父さんが生まれたばかりの私を抱えて途方にくれただろうな…本当のお父さんも大変だったんだよね…


「それで満姫が亡くなって半年位経った頃だった…高瀬くんが私達夫婦を訪ねて来てあなたの事を頼めないかって言ってきたの…高瀬くんももうどうにもならなかったんでしょ…疲れきって痩せてかなり思いつめた感じだった…このままじゃ高瀬くんも柚姫も駄目になるんじゃないかって思って私達はあなたを引き取る事を決めた。」


お父さんも頑張ったんだ…それでもどうにもならなくてお母さん達に頼んだんだ…私と自分の事を真剣に考えて…





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