溺愛〜ラビリンス〜
問いかけると翔真は視線をこちらに向ける事なく
「あぁ…」
と答えた。
「じゃあ外に出ちゃったのか…」
俺が呟くと翔真はこちらを向き指示を出す。
「時間が経ってる…いくら柚でも、敷地の外に出ただろ。捜索は敷地外を中心にしろ。」
「分かった。」
返事をして階段を下りようとすると、倉庫から出て行く爽の姿が見えた。
「爽!」
踊り場から叫んだ。爽が振り向きこちらを見る。
「二階の非常口から外に出たみたいだ…時間経ってるから敷地の外に出た可能性が高い。外を中心に探せって指示が出た!」
「分かった。」
爽は携帯を出して電話をかけて小隊長達に指示を出した。
俺は電話で健人にも同じ様に指示を出してから翔真の所に戻った。翔真は非常口を開け外に出る所だった。
「指示は出して来た」
「あぁ…」
返事をした翔真は非常階段の踊り場から下を見下ろす。
「ここからだと裏門から出たか…」
忌々しそうに呟いた。
「そうだな…人に会わない様に逃げるにはそうなるな?でも裏門は施錠してある筈だ…」