溺愛〜ラビリンス〜
「柚大丈夫そうよ?」
近づき声をかけると黒王子は私を見る。
「あぁ…分かった。サンキュ。」
そう言った後、思いついたように続ける。
「柚に何かあったら…俺にも連絡してくれ。」
「良いけど…私あんたの番号知らないよ?」
私の言葉に黒王子は慌てて携帯を出して番号を交換した。
黒王子の番号…女子がみんな咽から手が出る程欲しがる番号が私の携帯に入ってるって知られたら大変な事になるな…そんな事を思いながら教室の中に戻る。
柚と有希は何か話しをして盛り上がっていた。
遠巻きにブラックホークスのメンバーが様子を見ている。彼等もお役目大変だわね…
「何盛り上がってるの?」
柚達に近づきながら言う。
「亜莉沙、あのね…」
こっちを見て笑顔で返事をしていた柚が次の瞬間、表情を固めてしまった。
入口付近が女子の悲鳴の様な声で騒々しくなる。そして白王子が教室に入ってきた。
柚は気のせいか震えているように見える。有希も表情が強ばっている。警護のメンバーは少し離れた所で臨戦体制に入っている。
教室の空気は最高潮に温度が下がり、凍りつきそうな感じだった。