溺愛〜ラビリンス〜

白王子は教室に入って来ると柚の姿を確認してフッと一瞬笑うと、視線を反らして自分の席へ向かった。

白王子が自分の席に向かったのを見て、緊張していた柚はやっと体の力が抜けてホッとした表情になった。


「柚ちゃん大丈夫?」


心配そうに有希が聞いた。聞いている有希の方が泣きそうな顔をしている。


「大丈夫だよ?ありがとう。」


引きつった笑顔で答える柚を見て、有希も今にも泣き出しそうな顔になる。


「無理しないで?」


有希が柚に声をかけているのを見ながら、先が思いやられる状況に不安になりながら、顔に出さないように必死に笑顔を作った。今一番大変なのは柚なんだから…柚に気を使わせる訳にいかないし私がしっかりしないと! そんな事を考えているとチャイムが鳴った。


「先生が来るから席着こ?」


私が声をかけると有希が 頷く。


「そうだね…じゃ行くね?」


柚に言ってそれぞれの席に向かった。



私の心配を余所に何事もなく午前の授業は終わった。
黒王子は休み時間のたびにうちのクラスに来て、柚の様子を見て安心して帰って行った。

警護のメンバーは休み時間のたびに、翔真さん達に報告をしている様だった。何ともドタバタした一日だ…




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