溺愛〜ラビリンス〜
「…上森?」
俺が声をかけると驚いた顔で振り向いた。
「…坂本どうしたの?柚ならさっき健人さんが迎えに来て帰ったよ?」
「あぁ…見た。」
俺の返事に訝しげな表情で聞いてくる。
「じゃどうしてここ来たの?」
まぁそうだよな…そう思うよな?自分でも良く分からない行動だったから上森に何て言っていいか悩む。
「何となく…」
「プッ何…それ」
笑い出した上森に俺も笑みが溢れる。
「フッ…そうだな。おかしいな?」
「ッツ…そ、そんな事ないけど…」
笑い過ぎて目に涙を浮かべる上森。
「それだけ笑っといてよく言えるな?」
俺が少しむくれた感じで言うと、上森はハッとした表情になる。
「ごめんなさい。」
冗談のつもりだったのにまじめに受け取った上森に俺は軽い口調で説明をする。
「気にするな?冗談だ。」
俺がそう言うと上森は顔を赤くして怒り出す。
「もう!ふざけないで!」
何だかいつもの上森と違う雰囲気に俺も調子が狂っている気がする。