溺愛〜ラビリンス〜
取り合えず柚に何事もなかったし、一生懸命柚の事を気にかけてくれている上森に感謝して、気持ちの負担を軽くしてあげようと思った。実際にこの程度の事はどうにもならない事だ。
「坂本?」
上森は俺の言葉に少し戸惑った様子で俺の名前を呼んだ。
「あ?」
「良いの?柚が心配で慌てるかと思ってた…」
「淳稀の事はガキの頃から知ってるし、アイツの気持ちも分かっているからな…大体の事は想定できる。今日の事も想定内だな…」
「そうなの?」
上森は不思議そうに少し納得いかないような表情をする。俺はそんな上森に嘘じゃない事を証明するように本音を言う。
「まぁ…できれば初日じゃなく少し柚がクラスの中で落ちついてからにして欲しかったが…仕方ないな…」
「そっか…なんか坂本も鷹宮も意外だわ。もっと違う反応すると思ってたから…あっ、でも…それ言ったら爽さんや健人さんもそうかな…」
上森の言葉の意味が分からなくて訝しげな視線を向けると、気がついたのか上森が説明するように話す。
「だって爽さんて自分が柚を警護している時、普段あんた達を絶対近づけないじゃない?多分幹部の警護の中で一番鉄壁な気がするんだけど、今朝坂本が柚の傍にいるの許したでしょ?」